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限定された酪農家 信州安曇野牛乳は、安曇野の選ばれた5軒の酪農家が
しぼった生乳からつくられています

それぞれの酪農家たちは、限られた頭数の乳牛しか飼っていません。その分、えさを手づくりしたり、運動場や高原で放牧したりするなど、一頭一頭の日常の世話を丁寧に行っています。
ほかにも、藁(わら)やもみがら、おが粉を敷いて、乳牛の足に負担をかけない工夫をするなど、それぞれの個性も活かしつつ細やかな気配りを続けています。大量生産はできないけれど、家族全員で日々牛たちを見守りながら、のびのびと健やかに育てているのです。 水のおいしい安曇野は、米どころとしても有名です。安曇野の酪農は農業と深く結びついており、「水田酪農」とも呼ばれています。そのような背景から、米づくりに牛のたい肥を活かしたり、藁(わら)を牛舎に敷いたり、えさに活用するなどして、ムダなく循環させるやり方も取り入れられています。 農業にも長けている酪農家たちの中には、牧草やとうもろこしなどの飼料を手づくりしている方もいますし、獣医師らとともに研究した独自の飼料を使用している方もいます。また、牛舎の環境は常に高い清潔度を保っています。
いずれもとても手間がかかりますが、それでも乳牛の健康こそを第一に考え実践しているのです。
信州安曇野牛乳の酪農家は5軒だけ。同じエリアで比較的世代の近い方たちなので日頃の交流もあり、切磋琢磨しながらそれぞれの工夫で高品質な生乳を送り出しています。

※生乳…しぼったままの牛の乳のこと。

牧場に牛のいる風景
信州安曇野牛乳生産者紹介①
内田牧場 内田寿幸さん
酪農と米づくりの循環型農業を実践

牛への愛情が原動力

5ヘクタールの田んぼで稲作も行っているという内田さん一家。父親が1962年に乳牛1頭から酪農と米づくりの兼業農で始めて現在に至っている。

牛のたい肥を米づくりに活かし、その稲からの藁(わら)をえさや牛舎の敷き藁(わら)にするなど無駄なく活用し、いわゆる循環型の農業を実現している。
稲発酵粗飼料(稲WCS)は、農家として作っている食用のコシヒカリを使っている。米が実る前の青い稲を最適な時期に収穫して発酵させているとのこと。

「飼っている牛たちのことは全部好き。子牛を育てて出産させるまでに2年もの月日がかかるけれど、育てる楽しみも大きいですね」と内田さんは目を細め、「ぜひみなさんにも、安曇野のおいしい牛乳を飲んでもらいたい」と語る。

内田寿幸さんと田んぼ

牛が嫌がることをしない

内田さんは「牛乳の味は、気温やえさの種類によっても違いますが、最も影響が大きいのは体調です」と言う。

牛は体調が悪いと、乳脂肪分などが落ちてきてしまう。そこで、乳牛が健康に過ごしているかどうか、えさの食べ方を見たり、ふんの質や量、定期的な乳質検査では「体細胞数※」が増えていないかのチェックも行っている。また、体調が悪いと目と耳に変化が出るので、顔はいつも念入りに観察しているとのこと。
※体細胞数…乳牛の定期健診ともいえる乳質検査においてこの数値が高いと乳房炎のリスクが高まると言われている

牛の体調にえさが重要なのはもちろんだが、ストレスを与えない良環境を維持することも必須だという。

近年、夏場は安曇野でさえかなりの猛暑にさらされるが、牛舎の遮熱対策としてトタン屋根の表面に石灰を解いた水を吹き付け、大型送風機と併せることで、ずいぶん環境が改善されているそうだ。

さらに、牛の寝床でもあるもみ殻は常に清潔、乾燥に留意しており、そうすることで掃除がしやすくなるため人の作業負担が軽減され、清掃頻度も保てるという好循環が生まれている。

そして、基本的にとても重要なのは「牛が嫌がることをしない」ということ。
それが、人嫌いしない、ストレスのない牛の生育に繋がり、様々な工夫の効果をもたらす基礎になるのだ。

内田寿幸さんと牛 内田牧場遠景
信州安曇野牛乳生産者紹介②
丸山牧場 丸山康仁さん
えさの与え方もひと工夫
家族でケアできる範囲の頭数を維持

一頭一頭、手塩にかけて

丸山さんは酪農家の三代目、酪農と同時に米を育てる農家でもある。
丸山牧場では牧草やとうもろこしを自分のところで手づくりしているが、牛が喜んで食べられるよう、発酵には乳酸菌を使っている。

えさやりは1日3回。通常は朝晩2回のパターンが多いが、「牛の消化に合わせてえさをやる順番を考え、与える時間も調整します」と丸山さん。最初は消化にいい牧草を与え、食べているかどうかをチェックする。時間をおいて、とうもろこしを与えたり、体調によっては控えることもある。「大規模な酪農形態ではないからこそ、一頭一頭、手塩にかけて大切に育むことができ、おいしい生乳が搾れる」と語る。

飼育頭数も40頭に制限にしている。かつて試しに増やしてみたことがあったが、ちゃんと世話をしきれなかったため、今の適正な数に戻したそうだ。

丸山牧場の牛

細やかな健康管理

えさのやり方にも工夫をしている丸山牧場だが、こうした細かい健康管理は、獣医師のアドバイスや連携によるところが大きいと言う。

「乳牛の健康管理について、獣医師さんから情報をもらいます。毎日気をつけなければならない乳房炎の対処法にはじまり、子牛の育て方や出産前後の牛のケアやストレス解消法まで教えてもらいます」。
また、「うちでは、病気については早期発見と早期治療に心がけ、おかしいと思ったら早い段階で獣医師さんに診てもらいます」という丸山さん。

信州安曇野牛乳を支える協同乳業の獣医師たちは、日々、酪農家と連携しながら活躍しているが、丸山さんは「これまでもずっと牛の健康管理に携わってきてくれてきて、電話一本でいつでも来てくれる、無くてはならない存在です」と言い切る。
今も昔も変わらず、学ぶことも多いそうだ。

丸山康仁さんと牛

"信州安曇野牛乳"の
担い手として

限定された酪農家の一員となってからは「お客さんの顔が見える気がするようになった、消費者との距離が近くなったというか…」。そのため、「いつお客様に見られてもいいように、環境に気を使うようにもなった」とも。

都内の某駅ミルクスタンドで牛乳好きから大きな支持を得たことも聞いていたという丸山さんは、「水もいい、自然環境もいい、さらに製造工場もすぐそこという恵まれた条件の中で、"信州安曇野牛乳"というブランドの信頼感を維持する責任は感じますね。これからも是非多くの方に飲み続けてほしいです」と語った。

丸山康仁さんと牛
信州安曇野牛乳生産者紹介③
太田牧場 太田亨さん
牛をつながないフリーストール牛舎で
のびのび育成

大変だけど手は抜かない、フリーストール飼育

太田農場の牛舎に入ると、風通しのよい空間の中で、牛たちが自由に行き来しているのが目に飛び込んできた。
仕切られたベッドスペースで休憩している牛もいるが、仕切りのない通路を歩く牛もいる中、太田さんの子どもたちが水をやったり、えさをあげたり…、なんとも平和な光景だ。

「ちょうど松本からここ安曇野に移転したのをきっかけに、1986年、当時はまだめずらしかったフリーストール牛舎をとり入れました。はじめた最初の年は牛の世話もひと苦労で、さらに全国から200件もの視察が入り、対応も大変だったと父から聞いています。」

フリーストール牛舎とは、牛をつながないで飼育する牛舎のこと。牛は自由に動けるため、適度な運動にもなり、ストレスも軽減されるが、人間が牛を見張っていないと、けんかをしたり(牛同士でも好き嫌いはあるらしい)、他の牛に飛び乗ることもある。日中だけではなく夜中の見守りや、牛を一頭一頭、搾乳室に連れていくことも必要だ。

牧草の8割は自給で、地域の農家の協力もあり賄うことができているが、大型機械のメンテナンス等は経費節約もあり自分である程度できないといけないそうだ。そう考えると、酪農というのは、体力だけではなく、実はかなり多岐にわたる知識や技術も必要な部類の仕事なのだという。

太田さんの子供たちと牛 太田亨さんと牛

「正しいことの繰り返し」でしか結果が出ない

そうした環境の中でも、やはり牛の健康管理は最重要事項だ。

フリーストールで動き回る牛の足への負担を軽減し、足場の清潔を保つため、牛舎に細かいもみがらをたくさん敷きつめ、なんと2日に1回、新しいもみがらと総取り替えする。それより間隔をあけると効果が薄いのだそうだ。

また、太田牧場ではバイ菌等が少なくなるように各牛の乳頭の清浄を特に徹底しているので、乳房炎のリスクが極めて小さいとのこと。
そうした健康管理には、日常的に寄り添っている協同乳業獣医師の存在も大きい。
「獣医師とは牛をアダ名で言えばわかるようなつきあい」なのだと言う。

太田さんに、改めて信州安曇野牛乳の生乳生産者として選ばれ続けている理由を問うと、「安曇野の環境の良さはもちろんですが、農場の規模が小さいことにより目配りがきいて、きめ細かな世話ができることも大きいのではないか」とのこと。

「乳牛の健康が第一。牛がつながれないことで健康でいてくれれば、いつでもおいしい生乳が搾れるので、結果的に経営も安定します。"正しいことの繰り返しでしか結果は出ない"という酪農の先輩達の言葉を金言としています」と太田さんは語る。

丸山康仁さんと牛
信州安曇野牛乳生産者紹介④
甕(もたい)牧場 甕隆行さん
牛が長生きで出産回数も多い甕牧場、
飼育の工夫と約60年の歳月で生育の好循環も

乳牛2頭からはじめて約60年

2頭の乳牛から家族で酪農を始めたという甕牧場。松林を開墾し、区画整理された畜産団地であるこの場所に牛舎をつくり、その後はりんご畑も兼業している。

安曇野の扇状地から出る豊かで清涼な水や昼夜の寒暖差は、果物栽培や稲作などの農地に向いているだけでなく、酪農にも適している。
「りんごは、その場で食べた人が喜ぶ顔が見えることもあるので直接的なやりがいを感じやすい。生乳は出荷するだけでお客さんの顔が見えにくいが、信州安曇野牛乳は牛乳好きな方々の評判が耳に入ることで、限定された酪農家としてのやりがいを感じることができます」という甕さん。

そんな評判を生む甕牧場の牛たちは、総じて長生きで出産回数も多いそうだ。
その理由のひとつは、お産の2か月前から、牛舎に併設する運動場に放牧すること。これにより足腰を鍛えつつストレスが緩和され、体調を良好に保てるのでお産のときの事故を減らすことにつながっているのではないかという。

「とにかく大事に飼っている」と強調するように、自由に動きまわれる環境づくりや、「人嫌いにしない」ことなど、できる限り牛たちのストレスをなくすことを常に考えているのだ。

甕(もたい)牧場遠景

良質の飼料と健康管理が長生きの秘訣

長生きの秘訣には、良質の自給飼料を工夫して与えているということもあるようだ。
粗飼料※1は、5月、8月、10月の年3回収穫し、自分で作る。収穫後は乾燥させ、かびが発生しないように管理しながら、穀物(とうもろこし等)と合わせて出来るだけ年間を通して与えられるようにしている。

そして、獣医師のアドバイスも受けながら、「無理な搾乳をしない方針」を貫いている。
「父が酪農をはじめた頃は、梓川の水で牛乳を冷やし、自分で集乳所に運んでいました。当時から獣医師さんが専任で、深く酪農に関わり続けてくれているし、何かあったときにいつでも来てくれるのは、本当に心強い」と言う。

乳量はえさ、乳質は健康管理や無理のない搾乳方法などとの兼ね合いで変動する。えさはどうしてもお金がかかるのは避けられないが、乳質は必ずしもお金をかけずに工夫できることも多いし、その結果病気も減って損失も抑えられるので、そこを丁寧にやることで酪農家として良好な乳量、乳質を維持することができる、と甕さんは考える。

こうした努力が牛の健康につながり、おいしい牛乳という結果になって表れる。さらに「牛も一代だけではなく、何世代にもわたって健康が引き継がれ、少しずつ乳質も向上する好循環を生んでいるように感じている。それは牛群検定※2などの結果としても出るのでモチベーションも上がる」と甕さんは積み上げてきた年月の手応えを感じている。

※1 粗飼料…乳牛の胃にやさしい牧草や藁(わら)、乾草などの飼料のこと。
※2 牛群検定…乳牛それぞれの牛群(乳牛の乳量や成分、体細胞などの個体データ)を調べて集計・分析し、
能力をチェックするための検定。

甕隆行さんと牛 甕隆行さんと獣医師と牛
信州安曇野牛乳生産者紹介⑤
宮沢牧場 宮沢幸正さん
生産者としての努力はもちろん、
常に消費者の目線、思いを意識

清潔なのは「当たり前」

安曇野の好きなところは「山があり、そこら中に田んぼがあり、夜はカエルの大合唱…そんな、よそにはない当たり前な環境かな」という宮沢さん。父が農場を始めてから約60年。引き継いでからは30年近くになる。

信州安曇野牛乳の他の生産者とも共通しているが、宮沢牧場もやはり牛の敷き藁など、牛舎をとても清潔に維持している。

宮沢さんは「生産者はもちろん生産する努力はするが、売りものになることを意識しなくてはならない」と常に考えていると言う。
牧場内には酪農とは関係ない人達が来ることもある。その人達が牧場内を見て「こんな汚いところで…」と思われてはいけないという信念なのだ。

そうした視線を具体的に感じられるように、宮沢牧場では一般来訪者向けに自家製ソフトクリームを販売している。購入した人は、牧場内を散策しながら食べ歩きができるようになっているが、もし、牛舎の汚れた床を見たら、そのままソフトクリームを食べ続けたいと思うだろうか…。

そのような感受性を働かせることが宮沢さんの「当たり前」になっているので、敷き藁やもみ殻がいつもきれいで乾いていることは「特別なことではない」と言う。しかし、宮沢さんの「当たり前」の積み重ねが宮沢牧場の品質を生み出す基礎となっているのは間違いない。

甕(もたい)牧場遠景

出荷して終わりではない

えさに関しても、もちろんこだわりがある。しかし、他の酪農家たちとは少しアプローチが違う。
以前はえさの自給をしていたが、今は夫婦でのみ営農しているため体力的には宮沢さん一人に負うところが大きく、納得の行く自給が困難になった。

そこで、ある時期から飼育頭数を半分程度に絞りつつ、獣医師とも相談しながら栄養価を適正配合した購入飼料TMRを研究し、与えている。
結果的には、牛の体調も乳質も良くなり、信州安曇野牛乳の指定生乳に選ばれただけでなく、「農協ヨーグルト」でも同様に指定乳となった。「安易に変えてはいけない部分ではあるが、現状に疑問を持ったらいろいろと試してみることは必要ではないか」と振り返る。

そんな一大転換にひと役買った協同乳業の獣医師は、代々本当に身近な存在だったそうで「自分が子供の頃はじいちゃんみたいな存在で、やがて親みたいな方になり、そのうち同世代になり、いまは自分の子供くらいになっている」と笑う。
飼育のアドバイスはもちろん、特にお産の時は、ちょっとしたケアをしてもらうだけでも「親牛の回復(搾乳の再開)が早くなり、とても助かっている」とのこと。

信州安曇野牛乳の生産者に選ばれていることについて、宮沢さんは「見ず知らずの方との関係ができ、生産者がお客さんと関わっている。だから、関係者じゃないお客さんに見られて顔を背けられるようなことをしてはだめだ、出荷して終わりではないと思っている。出来る限りのことは続けていく」と決意を新たにしている。

※TMR(total mixed rations:完全混合飼料)

甕隆行さんと牛 甕隆行さんと獣医師と牛
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